小説紹介#5【異次元散歩】作者:Software Island

今回はSoftware Islandさんの小説を掲載させていただきます!

Software Islandさんは小説家になろうやノベルアップで活動されているようですよ!


今回掲載させていただくのは、Software Islandさんの『異次元散歩』の1話です。

もし興味を持った方は小説家になろうやノベルアップで続きをご覧ください。

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『異次元散歩』概要

少し変人な社会人の主人公が、日課の異次元散歩という独自で編み出した趣味の最中に不思議な出来事に遭遇し、とある世界への鍵を手に入れた。

まさか本当に異次元を散歩してしまうとは...

「頭狂亡聖ギブアンドテイクへようこそ!」



『異次元散歩』一話

目の前に広がるのは、現実世界では見たことの無いようなとんでもない風景。

「まさか……本当に異次元へ迷い込んでしまったのか……」

 得体の知れない女性が見つめている中、僕は呆然と立ち尽くしていた。

 それと同時に、高揚感をふつふつと感じた。


異次元散歩

 午後5時過ぎ。懐かしさと切なさが入り交じる黄昏の夕方。

 夕闇と香りがノスタルジーを感じさせる会社からの帰路。

 すれ違う人々は疲れた顔で、地方特有の駅前だけ栄えたオフィス街を練り歩く。

 靴底とアスファルトがぶつかり合う音は、疲弊した社会人による交響曲に聞こえなくもない。

 学生、社会人、老人、男、女……誰しもがストレスを大きく抱える世の中。こんなにも便利な世界なのに、なぜなのか?

 

 行き過ぎたんだ。今やインターネットの普及によって常に監視されているような状態。嫌な時でもスマホが鳴れば電話にでなければならないし、帰宅してもPCがあることで仕事を強いられてしまう。娯楽でやってるはずのSNSでは、無意味な見栄で自己顕示し、偽りの賛美に陶酔する。それがストレスを抱えている原因だというのに。

 ブルーライトを発する甘美なる悪魔にとりつかれた現代人は、知らず知らずの内に自らをイジメていることにそろそろ気づかないといけない。まぁ、気づいたところで、もうこのディストピアからは抜け出せないんだけどね。

 かくいう僕もそんな人々の一員であるが、運が良い事にSNSで疲れることが無いので、その点は他の人よりはマシなのかな……マシなのか?

 こんなストレス社会で孤独に生きている僕だが、少し変わった日課の趣味がある。

 傍から見たらまさしく異常だが、イヤホンで曲を聴きながら、人が全然来ない里山の中を異次元だと思い込んで探検するというイっちゃってる遊び、その名も異次元散歩だ。

 人がまったく居ない山道の遊歩道、耳元で流れる音に集中することによって、外界からの音的情報をシャットアウトし、異次元感を疑似的に作り出した世界、そこは言うなればパラレルワールド。僕は今、現代社会と乖離した世界に存在するというドキドキワクワク感を気軽に楽しめるという、ストレス社会が生み出した異常者予備群による遊びだ。

 そんな異次元散歩を実施する里山だが、都合の良いことに会社の帰路にあるので日々通っている。

 スーツ姿でひとけのない山道を徘徊する姿は結構ヤバいやつなので、地元の掲示板で噂されたりとか、不審者情報に載ったりしているんじゃないかなんて不安に思うこともある。これも現代社会における弊害だよなあぁ。

 オフィスが立ち並ぶ通りは駅前だけ、しばらく歩くと辺りにザ・田舎な感じのトタンで出来た茶色い家がポツポツと現れ始める。

 道が傾斜に変わり、辺りが完全に山っぽくなってきたところに現れる里山への入り口の階段。

 見慣れた風景だが、そこに異次元への扉があるのではないかという期待感に胸を膨らませながら、秋の風と雰囲気のある曲に世界をリンクさせる。

 さて、今日はどんな新世界を見せてくれるのか、僕はスマホのミュージックプレイヤーアプリでピコピコ音が心地い、疾走感のあるチップチューンを選択し、まだ見ぬ新世界へ心を寄り添わせ、小さな里山…その名も【金山カナヤマ】の入り口である階段を登り始めた。

 数十段ほど登った後、傾斜のキツイ遊歩道を少し歩くと簡易休憩所があり、そこにはコンクリート素材の椅子とテーブルがある。ここで一旦椅子に腰掛け、心地よい音楽を聴きながら小さくなった街並みを眺める。ここで飲む缶コーヒーは格別で、哀愁漂う雰囲気を身体全体で感じながら、悦に浸るのが定石である。

 学生の頃なら軽快にスイスイ駆けていき、縦横無尽に登っていけたのだが、社会人になった今ではなかなかにしんどい。

 休憩所でしばらく儚い薄赤色で染まった街並みを堪能したところで、その先にある杉の木が立ち並ぶ林道へと歩み進む。

 道中には小さな橋や沢があり、テクノロジーに囲まれた日常、人々の喧騒、そんな中で疲れきった心を五感全てで忘れさせてくれる癒しスポットである。

 林道を抜けると、狭くて荒れた遊歩道が現れ、異次元散歩も後半へと差し掛かる。

 今日も異次元への扉とは遭遇できずに、只々自然の中で癒されただけで終わるという事に、徐々に現実世界へ引き戻されていく。まあ、当たり前なのだが。

 そして、とうとう異次元散歩最終スポット、名も無き小さな神社に到着。

 ポツンと佇む少し朽ちた神社なのだが、とても神聖な空気を感じ、心から落ち着けるので大好きなスポットだ。

 この神社は裏手に扉があり、そこから入れる社中はご神体の鏡意外は何も無い部屋になっている。たまに気が向いたらお邪魔して、少し休憩したりする。本当はいけないんだろうが、なんだかこの神社に入ることで金山に受け入れらているという気持ちになる。孤独をこじらせすぎて暴走した、行き場のない承認欲求故の感情なのかな。

 ひさしぶりに神社に入りたくなったので、裏手にある扉を開け中へと入った。

???「頭狂亡聖ギブアンドテイクへようこそ!」

 そうそう。中には何も無くて……なくて???????

???「頭狂亡聖ギブアンドテイクへの受付はこちらです!」

 その風景は広大な自然!そしてそこら中に浮かぶ岩岩岩!! 標高何メートル?!?!へ?!?なにこれは???めっちゃくちゃキレイ!めっちゃくちゃキレイな自然!!!そして大自然の中にすんごい未来な受付カウンターみたいなやつ!!Go○gle??マイク○ソフト?なにこれ?!!そしてめっちゃくちゃ美少女!なにこれ?!

 一気に非現実感が襲った。しかしそんな中、とうとう異次元への扉を見つけ、異世界へとやってこれたという止めどない高揚感が溢れかえる。

受付嬢「頭狂亡聖ギブアンドテイクへの受付はこちらです!」

 未来感満載な受付嬢が声高らかに呼びかける。

受付嬢「頭狂亡聖ギブアンドテイクへ入場するためには、こちらへ掌をかざして登録ください!」

 受付カウンターの上に、これまた未来感溢れるホログラフィなパネルがある。パネルにはよくわからない文字みたいなものと、掌型のマークが表示されているので、そこに掌をかざせということなのだろうか。

「あの…トウキョウボウセイギブアンドテイクってなんですか…?ここは地球ですか?」

 僕の質問に対して受付嬢が満面の笑みでシカトを決め込みやがったので、よくわからないまま僕はそのパネルに手をかざしてみた次の瞬間、辺りが眩い光に包まれた。

???「頭狂亡聖ギブアンドテイクへようこそ。」

 耳元でそう囁かれ、僕は飛び起きた。そこはいつもの何もない神社の中。

 僕は異次元へ行きたすぎて気が狂い、そのまま寝てしまったのだろうか。それとも、神の逆鱗に触れて幻覚を見せられてしまったのだろうか。

 初めての異次元っぽい奇妙な体験に、沸き立つ高揚感と得体の知れない恐怖感を覚えしばらく呆然としていたが、ふと気がつくと日は沈みかけていて、辺りはかなり暗くなっていた。正直怖いので僕は家路を急いで歩いた。

 無事に家へ着き、今日の出来事を思い返しながらシャワーを浴びた。

 いったいあれはなんだったのか。普段から異次元散歩などという変な遊びをしているから狂ってしまったのだろうか。

 自分の中で、今日の出来事が脳の誤動作として解釈しつつある中、僕は手首に何かが書かれている事に気がついた。

 豁サ縺ッ驕弱■

 読めないが、なんか文字化けみたいな痣ができている。僕は、異次元の世界へ本当に迷い込んでしまったのかもしれない。

2話に続く…



2話以降は小説家になろうやノベルアップでご覧ください。

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