今回は梟葉 央留さんの小説を掲載させていただきます!
梟葉 央留さんは小説家になろうで活動されているようですよ!
【https://mypage.syosetu.com/1628588/】
今回掲載させていただくのは、梟葉 央留さんの『狂おしい今朝に魔女と道化は君を描く』の1話です。
もし興味を持った方は小説家になろうで続きをご覧ください。
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今回掲載させていただくのは、梟葉 央留さんの『狂おしい今朝に魔女と道化は君を描く』の1話です。
『狂おしい今朝に魔女と道化は君を描く』1話
0節 ナオとカレン
曇かけの空のような藍色の瞳を持った彼は体育館倉庫のバスケットボール入れの横で体育座りで震える。
数分経って1人の孤独に耐えきれなくなったのか彼は左手には数珠、右手には十字架を持って天に掲げた。 どこの宗教家と思いきや学生服を着ている。 どこにでもいる17歳の彼は重すぎる業を背負っているらしい。
彼は魔女に追われていた。 現代において魔女というのはある少女を例えたものであったが恐ろしく彼女にはその比喩が似合っていた。
「アントニー、かくれんぼはもうやめて出てきたらどうだ? 今なら怒らないし、お菓子もあるぞ」
不審者文句が似合わない凛とした声が体育館倉庫内に響く。 魔女の声だ。
アントニー、そう呼ばれたが彼は日本人である。 彼は直ナオ。 アントニーはニアミスすらしなかった。
ーー コツコツ。
少しずつ近くなる魔女の足音にナオは警戒を強め息を止める。 ついでに耳も塞いで携帯の電源を切る。 特に意味はないが目を閉じた。
ーー コツコツ。
踵の高い方を履いているわけではないのに魔女の足音はいつもこうだ。 隠れているものの寿命を数年縮めるように不気味で、体を凍りつかせる。 耳を塞ぐ手を貫通して鼓膜に響くので更にタチが悪い。
ーー コツコツ。
? 先ほどから同じような近い場所で何度も音がしている。 あたかもナオの居場所に検討がついているかのように同じ場所を嗅ぎ回っている。
ーー フウ。
(はうっ!!)
まつ毛に温かい息を吹きかけられ、思わず声が出そうになるが必死に手で押さえる。 危なかった。
声など出そうものなら途端に居場所が……。
息?
体育倉庫にはナオしかいない。 当然ながら自分で自分のまつ毛に息を吹きかけるのは不可能だ。 では誰が息を吹きかけたのか。 もしやの仮説に思考が止まり、幽霊であってくれと願うナオがいた。
ーー フウ。
2度目の吐息にゆっくり目を開けると目の前には悪戯な魔女の笑みが広がっていた。
「ばあ!」
悲鳴をあげる前に口元にハンカチを押し付けられた。 強烈な眠気が襲いかかり抵抗ができない。 痛みを伴う気絶ではなかったのはせめてもの慈悲だったのだろう。
◆◇◆
頭がグラグラする。 気づくと化学実験室にいた。 体や口を動かそうとするが動かない。 どうやらガムテープで手足を縛られ、口を塞がれているらしい。
目の前に座り、縛られているナオをノートに描く魔女はナオが目を覚ましたことに気づき、口のガムテープをわざとらしく乱暴に剥がした。
唇が丸ごと持ってかれたかのような痛みに襲われて、ナオは魔女を睨みつける。
「すまない、手慣れないものでね」
魔女は憂いを全く感じさせない声色で反省に似た何かをする。
魔女は絵画から出てきたような静かな美しさを感じる、透き通った白い肌、サラサラとした金髪に灰色の瞳を持った少女だった。 魔女のカレンはナオを見下ろして呆れている。
「毎度毎度、私に構ってほしいからと逃げるのはやめてもらえるか? かまってちゃんの需要はもう終わったぞ」
かまってちゃん呼ばわりされたナオは頭痛を覚えた。 どこをどう解釈したらナオが悪い方向になるのか。 危ない奴から追われれば逃げる。 生存本能に罪はない。
「じゃあさっさと解放してくれるか」
「まあゆっくり聞きたまえ、偶然見つけたんで君に手伝って欲しいことがあるんだが」
「お断りします」
妙に聞き覚えのあるフレーズに悪寒がして脊髄反射で返す。 気合の即答を受けたカレンは灰色の瞳を潤ませていかにも悲しそうな顔を貼り付けた。
「それは非常にひじょうにひじょーに残念だ。…...ところで先程思ったのだがこのガムテープを何回も貼って剥がしたら、何回で唇の皮は剥がれるのだろうか?」
恐ろしい拷問予告に唇から血の気が引く。 リップでどうにか出来るレベルにならないのは容易に想像がついた。
「やらないよな?オレで試さないよな?」
「君は最低だな、自分が傷つかなければいいのか」
カレンはさっきまでの悲しそうな顔から打って変わって真面目な顔をして言い放つ。 嘘泣きじゃねえかと睨むとカレンはナオに朗らかに微笑みかける。
「冗談に決まってるだろ。 私と君の仲だろ」
冗談ならなぜカレンはガムテープを等分に切って机の角に貼る作業をやめないのか。 そもそも『君と私の仲だろ』というキラキラワードを使われるのに縛られる関係とは一体。
唇の皮と今後の面倒を天秤にかけて唇の皮を見捨てられるほどナオの肝は据わっていなかった。
「何をすればいいんだ?」
「さすがアントニーだ。分かってるじゃないか、私が手伝って欲しいのはこれだよ」
楽しそうにするカレンは机に積まれた本を4冊取って要求を呑んだのにも関わらず縛られ続けているナオの顔に近づけた。
「ラノベか」
「惜しい。 正確には引きこもりの聖書だ」
名誉なのか不名誉なのかよく分からない称号を与えられたラノベをよく見るとある共通点に気づいた。 表紙にはスライムやら幸の薄そうな主人公やらチート臭い能力を持っていそうな主人公が描かれている。
「異世界系か」
「その通りだ!」
カレンは楽しそうにナオの額に人差し指を突き刺す。 この女はナオになら何をやっても許されると思っている節がある。 グリグリとねじ込まれる爪を無視してため息混じりに問う。
「小説家にでもなるつもりか?」
「いいや、私は文才がない。 だから単純に異世界転移をしようと思う」
「…………へ?」
今どうやっても許容できない言葉が耳を通り抜けた気がする。 どこにも単純な要素は見当たらない。 耳が遠くなったと思われたのかカレンは次は耳元で囁く。
「だから異世界転移だよ。 私たちが異世界転移するんだ。」
うん、聞こえてた。
今までカレンはナオを捕まえては毎度一緒にサバイバルだったり穴掘りだったり、クマ狩りをしたり、とにかく無茶苦茶した。 ……しかし今回はどうだろう。
「ムリだろ」
考えるより先に結論が出た気がする。
本の中に入りたい。 主人公になりたい。 誰もが一度は願った夢が叶うわけがない。 しかしその言葉を待っていたかのようにカレンは口角を上げていた。
「なにも無理なことはない。異世界転移など歴史の裏で何度も行われている」
カレンは制服のポケットから折りたたんだ地図を出して広げる。 地図を見ると世界各地で異世界転移が行われたと思われる場所が細かく書かれていた。 その記述は日本にも及ぶ。
「これって小野なんっていうんだ?」
「小野篁たかむらだな。 彼は井戸に落ちてそのまま閻魔大王に会ったとされている」
それって異世界というより地獄じゃね?という言葉を飲み込む。カレンにこの手のツッコミは無駄だ。 逃げるには適当に誤魔化すしかない。
「日本も異世界って関係あったんだな」
異世界は洋風のイメージがあったので日本は関係ないものだと思っていた。
「ああ、ついでに徳川家康に佐々木雪道も関係していると言われている」
へーそうだったんだ。 すごいすごい。
「マジか」
「大マジだ」
カレンは無理矢理口角を上げて機械的にニコッと笑った。 これ以上の問答は無意味だから黙って手伝えと言われた気がする。
……異世界転移を試みることが決まった。
これは後で調べたことなのだが、尻尾の2人にそんな事実はない。 というより佐々木雪道に関しては誰やねんというレベルで詐欺師とどっこいどっこいの所業だったと言える。
◆◇◆
次の日 、ナオは学校の屋上で魔法陣を描くことになった。 これが異世界転移するためには一番安全な方法で他にも代案があったが
「色々なラノベを調べてみたが、
A.普段通り過ごしていたらある日突然コース
B.死んだらそのまま転生コース
の2つがあるがどっちにする?」
幻聴か、魔女の声が聞こえた。
おそらくAコースに関してはやらせる気がないだろう。 仮にやったとして1日で結果が出なかった場合、強制的にBコースになるだろうと経験が告げていた。 そしてBコースの場合、リアルに閻魔大王に会いに行くことになる。
そこでナオはスマホでそれっぽいサイトを探し、いかにもそれっぽい魔法陣を見つけたのでそれを試すことを提案し、今に至る。
屋上の使用許可があっさり下りたのはこの学校のボスがすでに魔女の傀儡だからかもしれない。 つまらないことを考えながら屋上にチョークで魔法陣を描いていると不意に思う。
これしくじったらオレどうなるんだろう。
空は残酷なほどに静かで何も答えてくれなかった。
夕方5時になって、すっかり気分が上がりきっているカレンは魔法陣を見て首を横に振る。
「魔法陣がもう一つ足らん」
「行くのお前だけじゃないの?」
ナオは手・伝・え・と言われた。 一緒に行くとは言っていない。 当たり前の疑問にカレンは不思議そうに首を傾げる。
「君は私がいなくなったら困るだろ」
NOと言えない質問は脅迫と何が違うんだろう。
それから時間が経ち、学校の屋上、夜の6時、条件は整った。 魔法陣の上に立って2人で呪文を唱える。
「ナマン・チロタラタラ・アララ・エレヌヨロ」
「……」
……魔法陣から静寂が召喚された。
つまりサイトに記されている舌の体操になりそうな呪文を唱えても何も起こらなかった。
あからさまに不機嫌になったカレンに睨まれて、例のサイトを再度開き、画面を限界までスクロール、そして最後に小さな一文を見つける。
「最後に一本締めって書いてあるし」
一本締めで異世界に行けるわけがない。 そんなことはわかっていたがナオも唇の皮を守るために必死だった。
改めて舌の体操の呪文を唱える。 そして
「よーお」
パパパンパパパンパパパンパン
最後のパンと同時に目の前が真っ暗になった。
2話以降は梟葉 央留さんの小説家になろうでご覧ください。
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