小説紹介#3【四季織のいろは】作者:兎禾

今回は兎禾さんの小説を掲載させていただきます!

兎禾さんはノベルアップで活動されているようですよ!

【https://novelup.plus/user/474860400/profile】

今回掲載させていただくのは、兎禾さんの『四季織のいろは』の1話です。

もし興味を持った方はノベルアップで続きをご覧ください。

『四季織のいろは』概要 

その出会いは偶然で、だけど必然で、だから運命的な出会い。

これから始まる私の物語の最初の一ページ。

……その一行目。

彼女との出会いが私にとって大きな意味を持つ。

なんて、今の私は知る由もないのだけれど──。

私達を繋いだのは一枚の折り紙。

それは時を越え届けられた想いの形でした。

折り紙を通して織りなす少女達の群像劇。

彼女達が最後に見るその形とは……?

和の心と作法とその由来。

あたりまえだけど、知らないものがここにはあります。

四季織のいろは。

変わらない形を、あなたに──

この作品は毎週月曜日と木曜日に更新致します。

コメントだけでも気軽に頂けると嬉しいです!!


『一話』

四季織のいろは【四季の折・序歌 四季織のいろは 夢の通ひ路】

「──夢見月にキミ想ふ」

 撫で風 届けり想想 トクトクと

 雲雀鳴く声 君の歌かな

 ※

 枯山水の庭園で夜空の月を見上げ想いを馳せる一人の女性。月明かりに十二単衣はその色を鮮やかに煌めかせ、そよぐ風は艶やかな黒髪を優しく撫でる。髪に触れ視線を落としたその先で、光輝く白川砂しらかわすなの砂紋が水の無いこの庭園に水と波を描き魅せる。

 ──それが人なのだと彼女は呟く。

 想いを馳せ心に描く、その心こそが何より尊いものだと。

 夜風に吹かれ。

 雲の隙間から再び月が僅かに顔を覗かせた。

 ひさかたの 浮き雲重ね 十六夜の

 月夜に見るは 心の単衣ひとえ

 女性は一人、今宵の月に自らを重ね想いを詠う。

 時は平安。貴族と庶民の間での恋沙汰は禁止されている。しかし、人の心は変わらず惹かれ合うもの……女性はその日、輦てぐるまに乗り隣り町へと向かった。その道中、野盗に襲われ女性が逃げ着いたのは小さな田舎村。そこで彼女は一人の若い男と出会う。

 これは、そんな二人の物語。

 夢見月にキミ想ふ。

 惹かれ合う様に運命という名の恋に落ちた二人の愛の物語。

 それから女性は沢山の事を男から与えて貰った。それは高価な物などではない、平平へいへいたるもの。人並みの幸せ。しかし、彼女の中にそれは強く深く刻み込まれ、日を追うごとに止とどまる事なく大きく膨れ上がったそれを彼女はいつしか愛と呼ぶ。

 そして、彼女は自身の与えられる唯一の物を男に与えた。

 男はその日、浮かぶ夜月を見上げ歌を詠む。

 すやすやと 居眠るうさぎ 月の上

 見るは優しき 君の声かな

 頭に手を当て両目を瞑り、首を振る。

 そんな男の姿を見た女性は優しく微笑むと男の歌に、歌を詠む。

 夜に響く 愛しきキミの 呼ぶ声も

 月は見守り 寝顔照らせり

 二人は寄り添い月を眺める。

 重ねる指と指で確かめる夜。

 永遠は確かにそこに在る様だった──。

 

 ──それでも現実は残酷な程に現実的なものだ。

 二人の元に武士を従えやって来たのは一人の貴族。その日、二人は引き裂かれるように再びその袂たもとを別つ事となる。女性を乗せそのまま村を後にする牛車を囲む武士の隙間から男は叫び見続ける。次第に小さくなり消える迄、男の伸ばした手は最後まで空くうを掴んで離さなかった。一度も振り返る事の無かった彼女の顔をいつまでも思い浮かべながら。

 それから幾日の時が経ち、田舎村では男が一人夜の月に歌を詠む。

 ──どうか、あの人に届けと想いを馳せて。

 満ち欠けは いつも横顔を 追う様で

 キミの素顔に また出逢いたい

 同じ刻とき、女性は一人枯山水の庭園で夜月を見上げる。

 ──十二単衣を身に纏い、今も想うは心の中の想い人。

 夢現ゆめうつつ 空で言える 心音こころねは

 去んぬる夜の 月に見るかな

 ──それは惹かれ合うように。

 花降らし 揺れる髪留め 涙痕と

 映す月華の 光輝に染まり

 ──出会い直ぐに恋に落ちた。

 夜照らし 揺れる笹の葉 月のもと

 乙女の涙 届けや祈り

 二人の変わらぬ愛の歌達でした──。

 例えばこの世に叶わぬ想いがあるとして。

 せめて想いを未来へ託したい。

 そう思う心は間違っているのでしょうか?

 夢見月だと貴方は笑われるでしょうか?

 届かぬ月に手を伸ばし。

 触れられたらと流す涙は。

 貴方に今、届いていますか?

 女性の手には一枚の和紙の千代紙。

 指先で折り付け残す折り筋。

 紙の擦れる音が響く夜。

 象かたどる形は想いのかたち。

 彼女はその手に一羽の鶴を乗せて月へと翳かざす。

 ──どうか、千年先の未来で逢えますように……と。

 夢見月 巡る季節に 咲くいろは

 折りの違ひめ 夢の通ひ路

 一羽の鶴に願いを込めて──。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「──夢見月にキミ想ふ」

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とても情緒的な素敵な作品でした!

2話以降は兎禾さんのノベルアップでご覧ください。

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